Research Results 研究成果
東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の北條元・元助教(現九州大学総合理工学研究院准教授)、東正樹教授、名古屋工業大学の壬生攻教授らの研究グループは、セラミックス結晶中に磁石の性質(強磁性)と電気を蓄える性質(強誘電性)が室温において共存することを確認した。室温での両性質の共存は、鉄酸ビスマスを用いた次世代磁気メモリー実現のための鍵として注目されていながらも、磁性不純物の影響により、これまで本質的であると実験で確認されたことはなかった。
同研究グループは、コバルト酸鉄酸ビスマスを薄膜形態で安定化させ、その磁気特性および誘電特性を詳しく調べた。その結果、温度に応じて磁石としての性質が変化し、低温では消失していた磁石の特性が室温では現れることを明らかにした。電気を蓄える性質も備えている。強磁性と強誘電性の相関が確認されたことから、新しい原理に基づく、低消費電力かつ高速アクセス、大容量の次世代磁気メモリー開発につながると期待される。
同研究グループには東工大の川邊諒・元大学院生、清水啓佑大学院生、山本孟大学院生、インドのボーズ基礎科学研究センターが参画した。
研究成果はドイツの材料系科学誌「Advanced Materials(アドバンストマテリアルズ)」のオンライン版で12月21日に公開されました。
図1:鉄酸ビスマス(左)とコバルト酸鉄酸ビスマス(右)の磁気構造の模式図。鉄酸ビスマスは反強磁性体であるため、スピンの磁化は打ち消し合い自発磁化は現れない。一方、コバルト酸鉄酸ビスマスはスピンが傾斜しているため、磁化は打ち消し合わずに自発磁化が現れる。
図2:室温における鉄酸ビスマスとコバルト酸鉄酸ビスマス(xはコバルトの置換量)の電気分極の外部電場依存性(左)および磁化の外部磁場依存性。